五行歌

+  悼  +

井椎しづく

傷を
見せびらかすつもりは
ありませんが
思わずぽろりとこぼれたのは
見逃してください

胸の奥にひそむ
石の存在を
感じた
私の中の重みも
ごろり と答えた

あなたがいなくなった
と いう
痛烈な手紙しらせ
あなたの代わりに
生きろ、と言ってる

「いいのですよ」
あなたは何だって
許してしまう
許せない自分に比べたら
なんだって許せるから

怒りを
祈りに
変えたから
こんなにも
愛されたのでしょう

あなたの目が静かなのは
いろんなものを
捨てたから
誰よりも
怖さを知っているから

あなたが途中まで
つづった線の延長に
点が見えたような気がして
私なりに
続きを描いてみるよ

命の時間を
意識できずに
彷徨っていた
その果てを知った今
迷わず 歩ける




五行歌

+  慕  +

井椎しづく

ずるいよ
あなた
その声
眠っていたものが
暴れるじゃない

口づけは
顔中に降らせて
ことばよりももっと
愛しいって
言われてる気がするから

他の人に
ほめられるより
あなたの
すくい上げるような
視線をちょうだい

あなたのボタンを見せて
あなたのボタンを押したい
わたしのボタンも押して
ピコンって札が上がって
微笑むから

あなたがわたしをみつける
そしてこちらへ走ってくる
妄想は
ぎゅう詰めの箱に
またしまって

出ておいで
わたしの砕けたハート
ほら
こんなにも
見てくれるひとがいるよ

粉々に砕け散った
カケラ集めて
万華鏡
くるくる回せば
狂おしくも光る

主人公が
夭折すると
必ず彼を思い出す
お話しじゃない
私のリアル

自分が
川になったよう
胸底を
石が
ざらざらと転がる

差し出した手は
空のあなたに
届かない
目をつぶっているから
あたしにさわって



「軋」展パネル展示作品