【装丁】大島健志『だらしのないぬくもり』

「カバーの絵はこれを使いたいんです」と差し出されたスマホには、きりっとした碧眼の黒猫がいた。
耳の大きさと肩の小ささ。気丈な睨み具合がぐっとくる。

涙目で
睨み付けた
未来から
ずっと ダメ出しを
されている

この歌集の中の一首とも、うまくリンクしている。
この油絵は、大島さんの友人、画家の吉澤敬二さんの作品。
基本のデザインはそらまめ文庫仕様なので、装丁としてはカバー表が勝負に。
タイトルが長いこと、著者の希望などをいれつつ、猫の瞳の色の緑と調和させる色遣いにまとめる。小豆色のような紫は、絵の中の影にもなじむ。今回は装丁よりも歌集の内容を中心に書きたい。

7章各12首にきれいに構成されていて、弱気な絶望と強気な開き直りの狭間で揺れ動くこころが詠われている。時には情けない自分でも、それをさらけ出す。
これはある種の勇気がないとできないことだ。
大島さんは、表出する勇気としてはすごく強い。
詠ってることは、弱さも多いのに。

ありのままの自分を肯定する。それが生きる力になる。
あれこれあっても、やっぱり自分はカワイイ。
同じような弱さを抱える人にも、この肯定感は響くだろう。

枝葉なら
いらない
君の芯を
撃ち抜く
言葉だけ欲しい

この歌が好きだ。私の心にも刺さった一首。
恋の歌として受け取った。(以下妄想)君の心はまだ自分のものになっていない。勇気を出して、告白しよう。どんな言葉を選べばいいのだろうか。君の心にささる言葉・・・。

恋と思うが、もっと普遍的に歌を読んでくれる誰か、としての「君」とも受け取れる。
誰かの心を「撃ち抜」きたい。これは創作するものの共通の願いだろう。

30代終わりの集大成としての一冊。若い歌は若いときにしか書けない。
内容とボリュームと新書という体裁のバランスがとても良いまとまりの歌集だと思う。

あとがきで著者本人が語る。
「私はきっと、五行歌を通じて、かっこよくなりたいのです」
そうだ。かっこよくなりたいと願う人の歌集。
今後は、この「だらしのないぬくもり」から、抜け出すのだろうか。
だとしたら、だからこそ、このいまの「ぬくもり」を書く必然があるのかもしれない。
大島さん、初歌集、上梓、おめでとう!

【そらまめ文庫 お2-1】
著者:大島 健志(おおしま たけし)
新書判・並製・110頁/定価800円+税/ISBN978-4-88208-161-6