【アート鑑賞】クリムト展

華やかで艶めかしい作品が印象的なグスタフ・クリムト、没後100年を記念した日本では過去最多の作品が集まったクリムト展が、4月23日から上野の東京都美術館で始まった。

前売りを買って楽しみにしていて、連休前の金曜日の夜間延長のあるときがねらい目ではないかといそいそ出かけて行った。予想より家族や仕事仲間の作品も多く展示されていた。父や弟も全部クリムトなので、ちょっと紛らわしい。「グスタフ・クリムト」が画家のクリムトである。
父が彫版師、弟が彫刻師、彫金師であることから、あのような金をふんだんに使った作風が生まれたと思われる。劇場装飾を中心とした仕事からスタートしたことから、あの独特な装飾的画風なのかと、うなづくものがあった。紋様や金の装飾も、どこか琳派の画風に通じるところがあるのも、日本人好みと言える。

この前のムンク展は、100%ムンク作品だったので、あの密度から行くと、案外クリムトの作品は少ないなぁと正直思ったが、量より質といったところか、見応えある油彩数点だけでも見る価値はあったと思う。パンフレットにもなっている『ユディトⅠ』はこれぞクリムト! とため息がでるゴージャスさと妖艶さだ。


パブリックドメイン美術館より拝借。以下同様。

もう一枚は、ヌーダベリタス<裸の真実>色がうつくしく、絵画部分は薄塗でとても透明感があるのに驚く。

クリムトの死生観を色濃く感じる『女の三世代』こちらは大変大きな作品で、圧巻。幼子と女性と老婆を同時に描いている。バックの滝のしぶきのような意匠は、命の連鎖を思わせる。それにしてもこの構図。センターに色も形もぎゅっと詰め込んで、バックの処理、コントラストの強弱、こんな絵書く人はほんとにいない、唯一無二だ。

私が一番息を飲んだのは、「べートーヴェン・フリーズ」こちらは複製なのだが、1984年に制作された原寸大の壁画で、ベートーヴェンの交響曲第九番に着想を得たことから、第九が会場に流れていて、絵とともに鑑賞できる。その精巧さも大きさも、目が釘付けになって知らない間に、涙が止まらなくなった。複製画にこれほど感激して泣くなんて初めてだ。素晴らしいyoutubeが公開されているので、紹介したい。

クリムト展《ベートーヴェン・フリーズ》CG映像

7月10日まで東京都美術館。
豊田市美術館は日本に数点しかないクリムトの油彩『オイゲニア・プリマフェージの肖像』を所蔵。東京の後はそちらへ巡回。ウェブサイトも素晴らしいので、ぜひご覧あれ。↓
クリムト展 ウィーンと日本1900